(略) しばらくは、服のお着替えで大騒ぎでしたが、それもやっと済んで、姉娘と妹娘は、
お母さまに見送られて出かけて行きました。シンデレラは、二人が行ってしまうと、急に悲しくなって、
台所の隅へ行きましたが、そのままそこへ泣き伏してしまいました。
すると、間もなく、誰かそっとシンデレラの肩をたたく者があります。びっくりして顔をあげてふり向くと、

ここから

どこかの知らないお婆さんが杖を持って、にこにこ笑っておりました。
『そんなに泣くものじゃないよ。』
『だって…だって…』
 シンデレラは、涙が流れて咽喉(のど)がつまって、それ以上なんにもいえませんでした。
『わたしは、ちゃんと知っているんだよ。お前は舞踏会に行きたいのだろう?』
 シンデレラはただうなずきました。
『よしよし、お前はいい子だから、舞踏会へ行けるようにしてあげよう。』
 シンデレラは、ふしぎそうな顔をして、お婆さんの顔を眺めながら、
もしほんとならどんなにうれしいだろうと思いました。
『でも、あたし、服もありませんし、靴もありませんし……』
 お婆さんは、シンデレラがそういいかけると、
『いいんだよ、いいんだよ。そんなこと、すこしも心配いらないんだよ。まあ、いっしょに来てごらん。』
 と、いって、そのまま先に立って出て行きます。シンデレラは、ふらふらと、その後へついて行きました。
 やがてお婆さんは、自分の家へシンデレラを連れて行くと、さっそくいいました。
『さあ、畠(はたけ)へ行って、南瓜(かぼちゃ)を一つとっておいで。それがお前さんを、舞踏会へ連れて行ってく
れるんだよ。』
 シンデレラは、すぐに畠へ行って、南瓜を一つとって来ましたが、どうしてこの南瓜が舞踏会へ連れて行って
くれるのか、考えてもわかりませんでした。
ところが、お婆さんは、その南瓜の右と左をすこし切り捨てて、なかの種をとり出して、杖でぽんとたたきました。

ここまで



すると、それは金色(こんじき)の美しい四輪馬車に変わりました。
 シンデレラは、思わずびっくりして声を出しました。お婆さんは、にこにこ笑いながら、おなじように杖一本で、箱
のなかにいた六匹の二十日鼠(はつかねずみ)を六匹のたくましい馬に変え、鼠をいきな馭者(ぎょしゃ)に変え、六
匹の蜥蜴(とかげ)を六人のりっぱなお供に変えました  (略)

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